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ラグビーと南アフリカ

スポーツには古傷を治癒する力があるとよく言われますが、このことは南アフリカにおけるラグビーの歴史を振り返れば自ずと理解できます。ラグビーは一国の命運を左右する力を秘めており、そのパワーはここ日本にもおよび始めています。

南アフリカで全人種による初の民主的選挙が実施された1994年以降、ラグビーは多様な人種・民族で構成される南アフリカを「虹の国」としてひとつにまとめあげる過程において重要な役割を果たしてきました。そして南アフリカ代表チームであるスプリングボックスは、これまでにラグビーワールドカップで史上最多に並ぶ3回の優勝を果たした世界最強チームのひとつとして数多くの栄誉を獲得しています。

南アフリカで開催された1995年のラグビーW杯において、スプリングボックスは初出場で初優勝という偉業を成し遂げました。当時のネルソン・マンデラ大統領がスプリングボックスでキャプテンを務めたフランソワ・ピナールに優勝トロフィーを手渡す瞬間を収めた写真は、虹の国=新生・南アフリカの誕生を象徴する場面として現在に語り継がれています。

当時の南アフリカの状況は、ネルソン・マンデラ役を演じた名優モーガン・フリーマンとピナール主将役のマット・デーモンが共演したクリント・イーストウッド監督による映画「インビクタス」で見事に描かれています。

スプリングボックスのメンバーに選出されることは南アフリカの多くの少年たちの夢であると同時に、親にとっても最高の誇り。ラグビーは南アフリカの週末の社交場、とりわけ代表チームの試合がある時には大きな話題となります。

南アフリカで人気の国際ラグビーの舞台のひとつは「ユナイテッドラグビーチャンピオンシップ(URC)」。以前は南半球のラグビー強豪国であるニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンのクラブチームと世界最強の名誉を懸けて争う「スーパーラグビー」に参戦していましたが、2021/22シーズンからはスコットランド、ウェールズ、アイルランド、イタリアのクラブチームで争う「PRO 14」に南アフリカのブルズ、ストーマーズ、ライオンズ、シャークスが加わり、リーグ名称もURCへと変更されています。

そして日本の「リーグワン」に相当する南アフリカの国内リーグは「カリーカップ(Currie Cup)」で地域別のチームの間で国内ナンバーワンの座を競います。

南アフリカで最大の収容人数を誇るラグビー競技場は、ヨハネスブルグ近郊のソウェトにあるFNBスタジアム。94,000人を収容する巨大スタジアムでは2010年以降、スプリングボックスによる試合が毎年開催されています。この他、南アフリカを代表するスタジアムにはヨハネスブルグを拠点とするライオンズのホームグラウンドであるエリス・パーク、プレトリアを拠点とするブルズのホームであるロフタス・ヴァースフェルド、ケープタウンを拠点とするストーマーズのホームであるDHLスタジアム、ダーバンを拠点とするシャークスのホームであるキングス・パーク、ポートエリザベスを拠点とするキングスのホームであるネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアム、ブルームフォンテーンを拠点とするチーターズのホームであるフリーステート・スタジアムなどが挙げられます。

南半球に位置する南アフリカのラグビーシーズンは3月の後半から8月上旬までとなりますが、オリンピック競技でもある七人制をはじめとした様々な形式のラグビー大会が年間を通じて催されています。真夏を迎える1〜2月はラグビーには不向きな時期ですが、近年頻繁に催されているビーチでのタッチラグビーのトーナメントも人気を集めています。

★ご存知ですか?

南アフリカでは60万人を上回るラグビー選手が登録されています。